ねじ山日記 ボルトが折れる?!なぜ?

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ねじ山日記 ボルトが折れる?!なぜ?

皆さま、ブエノスディアス!阪神ネジの山里です。ついこの間までサワディカップ!と言っていましたが、すぐに変わるところが家族に「ほんまにお父さんはカメレオンやな」と言われています。ようやく会社の手続きもほぼ終わり、阪神ネジメキシコも本格的な営業活動ができるようになってきました。ということでお客様訪問も活発にさせていただいておりますが、ねじに関して何かお困りのことがありませんか?と聞くと「ボルトがよく折れるんよ」とよく聞きます。今日はその「ボルトが折れる」ということについて書いてみたいと思います。ご一読いただき皆さまのモノづくりの向上に少しでもお役に立てば幸いです。

ボルトが折れる原因

「ボルトが折れた」という言葉はねじ屋の私としてはむちゃくちゃ恐ろしく感じるものです。ボルトの破損によって誰かが大けがもしくは命に係わることになることもあるからです。また、この言葉を聞くと瞬時に「ねじの強度不足」が原因と思われる方も多いかもしれませんが、そうではない場合も結構多いです。今回は、ボルトが折れてしまう原因を整理してみたいと思います。

まずボルトが折れている原因を大きく2つに分けますと、①ねじ自体の品質不良②ねじ自体は悪くないのに折れる、つまりねじの品質以外の何らかの問題に分かれます。①については問題が明らかなので良いボルトに変えましょう!つまり阪神ネジのボルトに変えるというのが対策です(笑)

問題は、②の規格や図面通りにねじは作られているのになぜか折れてしまうということです。そういう場合の代表的な原因をひとつずつ整理していきます。


 1.ねじが緩んでいるところに負荷がかかった

ねじは緩んでいると折れる原因になります。ねじが緩んでいると、締めこまれているものがピッタリとボルトと接触しておらず隙間が出来てしまいます。その状態とピッタリとくっついている状態ではボルト自体に受ける負荷が大きく変わります。そんな状態で繰り返しや想定以上の大きな力がボルトに掛かると折れてしまいます。

 

では、なぜボルトが緩んでしまうか?という原因も次に追究していく必要があります。それは、ねじの締めすぎだったり、衝撃によるものだったり、使用環境の温度差が激しいなど色んな事があるかと思います。

 

2.ねじの予期せぬ方向からの力が掛かっている

ボルトというものは、基本的に軸方向に引っ張られることを想定して作られていて規格で保証しているのは引張強度など軸方向の力となります。設計では出来るだけせん断方向に強い力が掛かるのを避けるようにするのが一般的ですが、どうしてもボルトのせん断方向に力が掛かるような使い方をしなければならないことがあることも事実です。その時にねじが耐えられる想定以上の力が掛かると折れてしまいます。

 

3.水素脆性の問題

高強度ボルトにめっきをした際に発生する問題です。めっき前にボルト表面をきれいにするために酸洗いをしますが、その際に水素がボルトの組織内に入り込み、それが原因でボルトの強度が著しく落ちるという現象です。ねじを締めたときは何もなくても後で頭が飛ぶという遅れ破壊という非常に恐ろしい現象をもたらします。

海外では意外とこの問題が軽視されているのかメッキ付き12.9のキャップボルトがねじ屋さんで売られていることを多く見かけます。

 

ボルトが折れないようにするにはどうするの?

ボルトを折れないように・・・と考えると「もっと強度の高いボルトにしたらどうか?」と考えられる場合も多いのですが、確かにそれで解決する場合もあります。ただ、まずはなぜボルトが折れてしまうのか?という原因追及をしてそれに応じた対策をしていくのが良いと思います。

・ねじが緩んでいる
・そもそも今のねじが耐えられる設計ではないのかもしれない
・繰り返しの力がねじにずっと掛かっているのかもしれない
・温度差があって緩んでいるのかも・・・
などなどです。そういった原因はある程度、ボルトの破断面を見ることによって分かってきます。ですので、「ボルト折れたわ、捨てよ」ではなくてできればその折れたボルトを残しておいて阪神ネジに連絡いただけたらありがたいです。

延性破壊と思われる破断面疲労破壊と思われる破断面



阪神ネジは皆さまのモノづくりの向上に貢献することが使命と考えていますので、喜んで一緒にこういった問題を解決していきたいと思っています。もし、ボルトが折れて困っているということがありましたら是非お気軽にお声がけください!

 

長文、読んでいただきましてありがとうございました!